Motomasa Sakuma
Yuta Fukaura
2014年以来、3年ぶりの再演となる「ナイトスイミング」。初演から引き続き、主人公のサルタを演じる深浦佑太と、その親友で事故で宇宙を彷徨い続けるタケミナ役の佐久間泉真に、初演の時のこと、今回の展望について聞きました。
佐久間:僕が中一か中二の時に観た「果実」で深浦さんを始めて見て、衝撃を受けました。当時は何も知らなかったから弦巻楽団に行けば深浦さんに会えるって思ってたんです。
深浦:(笑)ごめん、いない。
佐久間:それで弦巻楽団の演技講座を受けたんですけど、「あれいないんだな」…と思って。でも、予想以上に早く一緒に舞台に立たせてもらえたのが僕が高校一年生の時の「ナイトスイミング」でした。
深浦:ありがたい。
佐久間:当時はそんなに演劇もたくさんみていたわけじゃなかったんですけど、弦巻さんからメールをもらってお父さんと二人で「果実」を観に行きました。僕もそうだし隣で観ていたのお父さんも号泣してて。
深浦:ありがたい限りですね。無我夢中でしたよ、あの「果実」は…。僕はあの作品が好きでやりたいですって言った結果やらせてもらったものだから、無我夢中でやっていた。少しでも多くの人に楽しんでもらえたなら嬉しいですね。
佐久間:初演の「ナイトスイミング」は弦巻楽団演技講座のワークショップの成果として参加させてもらいました。稽古も途中まで別々でやっていたし、正直、そんなにちゃんと公演に参加することになると思ってなかったっていうか、数秒出て終わりだろうと思ってたんですけど、脚本がくるたび、「結構台詞ある!」って思ったのが当時の記憶ですね。
深浦:メインだったじゃん。
佐久間:周りもびっくりしてて。塩谷さんから稽古前に「脚本もらった?」って言われて、まだ見てないですっていったら「すごいことになってるよタケミナ!」「えーっ」て(笑)っていう思い出があります。頑張んなきゃなって必死でした。
深浦:僕は初めてあのくらいの年の差の人と絡んだんです。当時、僕が20代後半で、(佐久間が)16歳だったから、10歳以上下の人と一緒にやるってはじめてだった。だから、正直どう接すればいいのか全くわからなかった。でも、舞台上だとコミュニケーションがとれたので、ああすごくいい子だって(笑)。「ありがとう」って思いながらやってた記憶がありますね。
佐久間:右も左もわからないまま、慌てん坊でした。
深浦:落ち着いてたよ。新作でどういうキャラ付けなのかも迷ってたし、無我夢中な感じではあったんですけど。それこそ舞台上でちゃんと意思疎通を図ろうとしてくれて…、違うな、支えてくれた。なくてはならないなって感じでやってました。
佐久間:本当に遠い存在だし今も憧れの存在です。なんだかんだいって結構一緒にやらせてもらっているのですが、毎回嬉しい気持ちです(笑)。
ー3年経った「ナイトスイミング」、当時と気持ちの変化や、初演では気づかなかったことなどはありますか?
深浦:台本の感じ方が全然違っています。もっと希望と若さとキラキラが詰まった作品だと思っていました。それも間違っていない読み方だと思うんですけど、読み直したらもっと深くて暗くて絶望的な感じが全体的にあるお話だという風に、真逆な印象があったんですよね。そうすると大分やり方も、役の作り方も変わってくるのが面白いなって思いました。
佐久間:僕は初演の時は自分とひとつしか年が離れていない役だったので、中学生のどこから溢れ出るのかわからないエネルギーとか、そういうのもなんとなく近いところにあったんですけど、今、高校も卒業して大学生になって、改めて中学生と大人をを対比して見てみると、大人って時間が経てばなれるのかもしれないけど、その間にすごく深いものがあるんだなってことを感じるようになって。初演の時はもっとポップで楽しい(笑)、ザ・エンターテインメントっていう感じだったと思うんですけど、「あ、大人の話なんだな」ってことが、ちょっと感じられるようになりました。
深浦:子供と大人の間にあるものが、もう少しキラキラ見えてたんだけど、今は怖いものというか、得体の知れないものに見える。
佐久間:二人は親友の役だけど、親友なのは中学3年生のサルタとタケミナであって。大人になってもまだ親友なのか、この20年間に何が変わったんだろうってことがキーになってくるんじゃないかって。特に最後のシーンとか、ひしひしと感じます。
深浦:前回は、大人側の変化が見えるものなのかなって思ってたけど、今読み直してみると、大人はもちろんなんだけど、子供側も同じ境遇にあるのかなって思って。大人は大人で、死んでしまった人たちと生き残ってしまった自分に罪悪感を抱いているし、子供は子供でいなくなっちゃった彼らと今生きてる自分に罪悪感を感じてる、年の差以外の部分って同じ価値観でその状況にいるのかもしれないなって思うと、ちょっと捉え方が変わってくる。
佐久間:同じ捉え方をしているかもしれないけど、時間の経ち方というか、20年間の何かで見方が変わっているというか。
深浦:そういうところが目に見えるといいよね。大人の話じゃなくて大人も子供もしっかり同じ環境にあってその上で何が違う、ってことが出れば、子供も大人も楽しめるものになるのかな。
佐久間:そういう意味で、楽しみ方は違うかもしれないけど、どの世代でも共感できるような部分があるかもしれないって思います。
ー3年経った佐久間くんはどうですか?
深浦:みんな大人になったねとかいうけど、個人的にはそんなに変わらない気がしてて。身体は大きくなったけど、そんなに変わってない感じがする、共演が多いからかもしれないけど。いい成長はもちろんたくさんしてると思うんだけど、本質は変わっていない気がして、嬉しいです。擦れたりとか、するかもって思ったから。
佐久間:変わってないと思います(笑)。
深浦:僕は高校大学って変化があった時期なので、そこで変わらないっていうのは素敵だなって思います。
佐久間:今回は一度一緒にやったことある人が多いので、そういう意味で前回よりは気持ちが楽かなって思います。初演の時は毎回毎回緊張してたけど、今回はもうちょっと気楽に居られるかなっていうところはあります。
深浦:リラックスできている。…3年経ってどうですか、僕は。
佐久間:当時は舞台に立っている深浦さんしか見えてなかったですけど、舞台に立っていない深浦さんもみて、何て素敵な方…、
深浦:やめろ!(笑)
佐久間:(笑)。聞き上手なんですよね。一緒に帰ってる時とかも、どんな話をしても楽しそうに聞いてくれる。あ、演技が上手いってこういうことなんだなっていうか、舞台に立っていない時にどういう生き方をしてるかってのが舞台に出るんだなって、その姿を見て学びました。
深浦:やめろー!
佐久間:お世辞とかじゃなくて、本当に。舞台以外のところって大事だなって、見ていて思いました。
深浦:舞台以外の時ってなるべくダラダラしてるつもりなんですけどね、疲れちゃうから。気を抜かないようにしよう、稽古場でも。
ー前回と違ってずいぶん身体を使うシーンも多いですね。
深浦:そうですね。違う回路を使うよね、ダンスのところ。難しいんですよ、ダンスっていうか舞うシーン。
佐久間:自分の身体が今どういう状態にあるのか客観的に見なければいけない、かつ、肉体的にも疲労があるっていうのが、難しいけど新鮮で楽しいですね。
深浦:ぐっと引き込めるシーンになるといいね。
佐久間:中途半端になっちゃうとなかなか残念なので。
深浦:そうだね、やってみました、じゃなくて、舞台のシーンとして、目玉の一つとしてちゃんと完成したものを見せられるといいですね。
佐久間:なると思います。
深浦:いつもと違う弦巻楽団になるんじゃないかと思います。
ー最後に、ひとことお願いします。
佐久間:話がすごく共感出来るというか、ぐっとくるものがあるし、大いに期待していただけたらなと、思います。
深浦:前回よりも、充実していなくてどうしようかなって思ってる人に届く作品になるような気がしているんですよね。前回はもっと、頑張っている人たちがより頑張れる話のように僕は思ったけど、今回はもちろんそれはあった上で、重要なことから逃げ続けてたりとか、いろいろ後ろめたい状態になってる人でも、観ると少し救われる気持ちになれる価値観が、作品の中に埋め込めるんじゃないかなって、稽古を見たりとか自分の本の捉え方でも思ったので。それこそより広い年齢層の、広い価値観を持った人たちが必ず楽しめる作品になるな、という気がしています。
佐久間:使い方があってるかわからないけど、「普遍的」なお話です。いつどこで誰が見ても力になるっていうか、何かキャッチできるものがあると思います。この作品。言ったからには頑張らないと(笑)。