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Keita Tsurumaki

Michiko Watanabe

今回、弦巻楽団では初の試みとして、4年前に弦巻が作品に参加させていただいて以来、親交のある舞踊家・振付家の渡部倫子さんをお招きし、宇宙船の爆発シーンなどの動きを整えていただいています。演劇とダンスがコラボレーションする作品に対する考え方、演劇、ダンスに共通する必要な要素について聞きました。

弦巻:今、CONTE-sapporoっていう名前ですが、以前、「ユニヴァス」という名前で同じ人たちがスタジオをやっていた時に、僕が演劇というか文章を読んだり声を出したりするWS、平原慎太郎くんがダンスのWSをするっていう「演劇の人たちとダンスの人たち出会おうよ」という企画があったんですよね。

渡部:時間的に条件が悪くて、本当にうちうちのメンバーでこじんまりとやったんですよね。

弦巻:平家物語だとか、そうしたテキストを読んで、確か「言葉との距離の取り方」みたいな話をしたんですよね。感情移入すればいいってものではなくて、言葉を立てる読み方ってありますよね、っていう話をさせてもらって。そこで倫子先生と出会って、その後、一緒にやりませんかと声をかけてもらって、倫子先生の舞台に出演させていただきました。

渡部:それが奇しくもサンピアザ劇場でした。

弦巻:そうでしたね、サンピアザ劇場と、パトスでもやりましたね。倫子先生が作られている「崩」っていう作品に参加させてもらって、そこでちょっとセリフを書いて読みました。

渡部:ホントいうと、高校生くらいの女の子を主軸にした作品をと思っていたので、大学生くらいで語っていただける方をご存じないですか、みたいな聞き方をしたと思います。弦巻さんはお顔が広いのでどなたかいないかなと思っていましたが、ご本人にやっていただけるなんて思っていなかったから、天にも昇るような気持ちでした。やっぱり言葉をいろいろとご存知なので、引き出しが多くて、シーンにぴったりくる、ダンサーが変わっていくような言葉を発していただいてすごく面白かったです。

弦巻:僕はダンスの人たちの表現力には毎回圧倒されるんですけど、そんな中に僕みたいなある意味ぎこちないものがいてもいいんだろうかって思ってたんですけど、倫子先生の中ではそれも計算の上で、そこでの化学反応を面白がってくれてるのかなと思って、臆面もなく声がかかるたびにやらせてもらっています。

渡部:ダンスは演劇にはどうしても負けるんじゃないかなっていうところがあると思うんです。

弦巻:えー、そうですか。

渡部:演劇とダンスが半々の舞台を観たことがあるんです、ダンスが主力だけど途中でミュージカル調のお芝居が入ったものをやっているダンス系の団体を知っているんですけど、何回観ても言葉は強いなって思うんですよね。半々だと動きは景色にしかならなかったりするので、そのあたりの分量ですかね、重さとかをよく考えないとならないなっていうのはありました。

弦巻:ダンスとのコラボレーションしている演劇の人っていっぱいいると思うんですけど、僕個人としては、ダンスの人達の身体を使ってダンスだけで表現されている舞台は、自分のものになっている感じがすごくあるんですよね。舞台上にいる人達のものになっているというか。演劇って言葉を喋っているんですけど、どこか永久に借り物な気がしてて。それは脚本だったり設定だったり、決していい悪いじゃなくて、そういう向き合い方の違いかなと思ってるんですけど。ダンスとお芝居がコラボすると、僕が知ってる限りだとそこを見て見ぬ振りしている表現が多いかなっていうか、ダンスの振りしている言葉が多いなっていうようなイメージがあって、それこそ倫子先生が言ったように言葉が強いから、あえて抽象的な、弱い言葉というか、どうにでも取らえられる言葉だけでダンスに入っていく、みたいなコラボレーションの形が多いなって思うので、自分はそうはしたくないなって思って、愚直に、迷惑なんじゃないかっていうくらい具体的な言葉を持ちかけようとしました。そこが面白いと思ってもらえたりダンサーさんの刺激になってもらえるといいなと思ってて。去年、「Table」っていう作品を東京でやったんですけど、そういった感想をいただいてとても嬉しかったです。

渡部:生演奏と同じように、その言葉の強さだったりハリ感で動きがどんどん増長されていく感があって面白かったですね。生ならではの魅力があって、ダンスだけではこうはいかなかったりするんですよね、そこがやっぱり面白かったです。耳にする強さで身体って反応するんだな、と思いましたね。音楽よりも強いですからね、ストレートにぐっとくるものがあって、そうすると一人一人の分量はちょっとかもしれないですけど、それが全員になるとすごいことになりますよね。あの魅力ったらやっぱりないですよ。あと映像ですよね、映像っていうのは記憶とかになりますけど、映像と動きと言葉の三位一体となるものっていうのが最終的にやりたいものであって、それがどれが欠けても成り立たないものであって欲しいですよね。

弦巻:そうですよね。どれか一つの引き立て役に何かが回ってしまっては面白くない。僕がみちこ先生の作品とか作り方で、偉そうな言い方ですけど信頼できるって思うのは、その辺の向き合い方、いろんな要素をただの道具にしないところ。それがあるっていうことを前提に全てちゃんと捉えていられる。お芝居の何かを、ダンスだったりダンスパートが補完するような考え方ももちろんありだと思うんですけど、もうちょっと一段深いところで結びつきたいなっていう気がします。それっぽいものが欲しいからダンスを入れるっていうことじゃなく。

渡部:私は大学時代を東京で過ごして、ダンスをしてたんですけど、バイトをすることになりますよね。住んでいたのが吉祥寺だったので、あの辺て劇団が多いでしょう、バイト先にも劇団の人がいたんです。それでよく見に行くことになって、分野がいろいろある中でもコンテンポラリーなものとか今の時代を語っているものが好きだということに気づいたんですよね。古典をやってても、脚本的に昔のものをやっていても、現代にやる意味が捉えられているものっていうのは、自分がすっとその場に立てるっていう面白さがあって、それですごく惹かれていきました。本当にもう、東京に行くとこっそりいろんなもの調べて(笑)、ダンスでもバレエでもない演劇を見に行きますね。


弦巻:僕が倫子先生から声かけてもらってからなんだかんだで4年前くらい経ってますが、正直、ダンス的な要素はほとんどないような作品も多いし、外部とのコラボレーションみたいなこともやってる劇団ではないんですけど、弦巻楽団を面白がって観に来ていただいていて。今回「ナイトスイミング」で振り付けというか、お願いしますって言ったら快諾していただいたんですけど、実際はどうだったんでしょうか。

渡部:芝居の中で何か必要とする動きがあったんだろうなって思いましたね。音楽があり同じものを踊ることが必要なんじゃなくて、全員が何かの規則性をもってやることで場が凝縮されて伝わる力が強くなるようなことが必要なのかなっていう風に思いました。その辺ではなんでもというか、本当に光栄で、なんでも協力したいなと思って。弦巻さんには作品に協力していただいて、私も恩返しできることが、お役に立てればと思ったので本当に光栄でした。

弦巻:僕は今まで劇団として振りだったり動きだったりを外部の人にお願いすることってなかったんですけど、4年間、倫子先生と一緒にやらせていただいて、作品への取り組みで「この方なら」と安心してお預けしている感じです。もちろん、テクニック的に出演しているみんなにいろいろ言いたいことがあると思うんですけど。

渡部:ないですよ、みんな素晴らしい表現者ですよ。

弦巻:そう言っていただけると嬉しいです。今回、「ナイトスイミング」に出演している面々って、わりと弦巻楽団でも出演歴が長い人間が多いんですよね。僕は、「居方」っていうことに関してはガミガミいう方で、深浦くんも最初は「役者としてやる気のある人がそこにいる」って見えてたんですけど、6年くらい一緒にやっていく中で、ただの人間がいる、っていう風になれた。

渡部:舞台上でお客さんの前にいてもただの人間であることを目指している気はしますね、私たちも。ピナ・バウシュはコンテンポラリーダンサーっていうのは舞台上で日常的動作ができる人って言っていて。

弦巻:ピナ・バウシュにそれ言われちゃったら何も言えなくなっちゃう(笑)。

渡部:ピナの作品で、鼻歌歌いながら舞台上で髪を洗うものとかあるんですよね、ああいうの見たら驚愕します。天真爛漫で人間賛歌というか、生きてるって素晴らしいって思っちゃう。

弦巻:「ナイトスイミング」をやっていても本当にそれが一番難しいなと思います。僕の作品ってわかりやすいくらい設定がマンガチックだったりとか、エンターテインメントとしていろんな設定を借りてくるんですけど、どんなにオーバーでコミカルな役柄でも根っこのところで人間としての説得力みたいなのをちゃんと持ってて欲しいなって思ってて。お客さんの前にコメディアンが出てきたとは思われたくない。そういう意味ではみんなちゃんとそこにいる、居方を知ってるっておっしゃっていただいた部分はあると思います。

渡部:動きでカバーできるかなとか考えちゃう方なんですよね。でもただ歩く以外に何もいらないなっていう場合もあるので、カバーができなくなっちゃう。っていう風になると訓練が足りないというか。

弦巻:そのことを伝えるのって演劇の経験値が高い人ほど難しいんですよね。自分は自然体のつもりなんだけど、それって自然じゃないよねってことをどうしたら伝えられるか。どうしても精神論みたいな言葉しか自分から出てこなくて。そこが課題だと思うんですけど。いろんな言い方するんですけどね。もっと諦めてとか、自分であることを認めつつ役柄としてそこにいる、矛盾していることを要求しているんですけど、難しい。

渡部:それをやっぱり目指している気がしますね。齋藤徹さんの演奏聴きに行ってました?ワークショップも行きましたか?

弦巻:はい。僕の教えている学校に来て教えて頂いたりしてます。

渡部:札幌に来た時に、「聴く、待つ、信じる」っていうことを常に言っておられて。セッションの時に、心の耳で聞きなさいってことと、相手から出てくるものを待ちなさい、そして信じる、と、この三つをすごく言われていて。

弦巻:それだな(笑)。ほんと、待てないんですよね。自分も演技してたら待てないところあるからわからなくもないんだけど。

渡部:やっぱりついつい不安になって何かをやってしまうとか、間合いが怖いとか。

弦巻:埋めちゃうんですよね。



渡部:だからそれに尽きるなと思って。世界的な演奏家がセッションをやっていてこれが大事ってことは、演奏しないんですよね。だから踊りは動かない、演劇人は言葉を発しない。そいういうところが一番大事。この作品もみんながどんどん変わっていきますよね。私はたまにしかきませんが、シーンも変わり、言葉の流れも変わるし。本読みの一番当初からするとどんどんステップアップしていて、みんなどこに行くんだろう、って思うくらいすごいよくなっているから、楽しみなんですよね。

弦巻:そう言っていただけると嬉しいですね。今回ほんとに、自分ではみんなに伝えきれないようなポイントを倫子先生が伝えてくれているような気がしています。「こんな風に動いてくれたらいいな」って思っているところへ導く言葉のかけ方が違うというか。僕は演劇で考えてるから、どっか身体の構造とかじゃなくて、物理的にこう見えたいんだっていうことを言ってしまうんですけど、倫子先生は「こうするとこうなるよね」っていうことをパッと伝えていて、「床と仲良くなろう」って言ってくれた時に衝撃を受けました。新鮮な驚きで、そうなったら身体がそうなるってことを熟知されてる方だなっていうのが、勉強になります。



<渡部倫子プロフィール>
舞踊家・振付家。新潟生まれ。幼少、五十嵐瑠美子洋舞踊研究所にてモダンダンスを始める。上京後、東京女子大学舞踊空間コルトレーンにて沢美知に師事、沢美知ダンススペースで活動し、北海道に移住後、北海道インターナショナルダンスシアター小澤輝佐子舞踊団に入団。同舞踊団のすべての公演に参加。同舞踊団国際交流事業に加わり、ロシアノボシビルスクオペラバレエ劇場、中国黒竜江省ハルピン北方劇場、仏カンヌクロードドビュッシー劇場などで踊る。
2003年フリーとなり、東京で舞踊創作作品を出品し始めるとともに、舞台プロデュース、ワークショップ企画も行う。同年、DanceRing-zoneの前身となるグループでダンスエクササイズクラスをスタート。現在チアダンススクールを加え、設立から連続で全国大会出場チームを育成するダンス団体の代表を務める。
2012年より強靭なダンサーを育てたいと、ピラティス、コアコンディショニングを学び始める。現在、高校、専門学校でプロダンサー育成するとともに、札幌でピラティス、ストレッチポールを指導する。



 

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