MESSEGE
「サウンズ・オブ・サイレンシーズ」初演をご覧頂いたみなさまからコメントをいただきました。
2016年3月、下北沢「劇」小劇場で、札幌の劇団、弦巻楽団「サウンズ・オブ・サイレンシーズ」を観た。
良かった。まず何よりも戯曲が良かった。完成度の高さに驚いた。真っ直ぐに、愚直にど真ん中を行く会話劇。 更には、その自分の書いた”良い戯曲”を、しかし客観的に突き放し、抑制を効かせ無駄をなくしながらも丁寧に扱ったその演出に好感を持った。
俳優も良かった。大声では決して届かないことがある。ささやくようにひそやかに伝えることで初めて人はその声に身を乗り出して耳を傾ける。あるいは、つい大声を出してしまうことで返って、言葉にはならない何かが図らずも伝わってしまうこともある。巧拙では測れない魅力的な俳優たちだった。
そして主題である「声にならない言葉」。その「声にならない言葉」を、原理的に声に出すしかない言葉である「台詞」で描くという、この一見矛盾に満ちた行為、それこそがイプセン、チェーホフ以降の多くの劇作家らが培って来た、人間という存在のそもそもの矛盾と欠陥とを直截に描き出す近・現代演劇の魔術の一つであり、それが観客に共感やカタルシスを与えるのだ。弦巻啓太は正しくそのような遠い射程の演劇の歴史を背負って、歴史に対峙している。生半な覚悟では出来ないことだ。
今後、彼らが果たしてどのような地平を目指し、何処に辿り着くのか。ぜひとも見続け、伴走し、立ち会っていきたいと思う。
もどかしい。自主性を禁じられて育てられた子供みたいな感じ。
自由がそこにあるのに、それに手を伸ばすことを自分でやめてしまう。
それをみているもどかしさ。
これだけ上質なものをなんどもみられるというのは、幸せなことです。
矢野靖人さん
(現代演劇制作カンパニーshelf 代表、演出家)
派手な明りや音楽や舞台セットを用いず抑制の効いた演技で4人の登場人物たちが淡々と関係性を積み上げて物語が進行して行きます。僕の中で、水槽の中の魚たちをじっと観察している感覚と似ていて、なんというか観ていてとても痺れました。これは役者としてとってもやり甲斐のある舞台だなと。
小林エレキさん
(yhs)
初演を観ました。ちょうど札幌で別の劇団に客演中だったので、運良く見る事が出来ました。
この作品を観た後に思った事が、「怖い怖い怖い」でした。ネタバレになるので内容には触れませんが、ぞわっとしました。弦巻楽団は何回かしか観た事無いんですが、弦巻君はそんな経験があるのだろうか? 妙にリアルで、絶妙に気持ち悪い。そんな作品なんですよねー。いつもこんなん書いてるのかなー。いや、面白いんですよ!本当に。好きですよ。役者は大変でしょうけど。登場人物の心の機微が繊細に描かれていて、心をずっと動かしていなければいけない作品だと思うので。細かい芝居がね、お客さんにも分かるか分からないかくらいの細かい表情とか目線とかがね、大変なんじゃないかと。でもやりがいはあると思います。僕は役者としてやってみたいなーと思わせてくれる作品だと思います。おすすめです。ドキッとしますので、ぜひ会場に足を運んでみてはいかがでしょうか?北九州にも来ますので、九州の皆さんも是非!札幌の劇団の公演が観れる事なんてそうそう無いので良い刺激になると思いますよ!!
信山E紘希さん
(信山プロデュース/クラアク芸術堂)
葉山太司さん
(飛ぶ劇場)
大爆笑しなくても
大号泣しなくても
観る価値のある劇は、ある
私にとって、「サウンド・オブ・サイレンシーズ」はそういう作品だ。
淡々と粛々と流れていく時間の中で、徐々に人間模様が露わになっていく様が、私には興味深かったし。過剰な演出を抑え、俳優を最大限に活かそうとしているように思えたし。俳優たちもその演出の海を過不足なく漂っていたし。セットや水の演出はアーティスティックだったし。
沢山の人の、目に晒されてもらいたい、し。
弦巻さんの作品は、一作ごとにまったく違う風景が描かれていて、その幅の広さに舌を巻く。
感動のラブストーリーもあれば、サスペンスもある。そして今回の「サウンズ・オブ・サイレンシーズ」のように、人間の闇をのぞくような作品もある。どんなジャンルも弦巻さんの手にかかるとあっという間にステキな作品になってしまう。本当に魔法使いのよう。
「サウンズ・オブ・サイレンシーズ」は重めの作品なのだが飄々としていて品がある。その足取りの軽さは日本全国で活動を展開する弦巻さんのようでもある。まだ弦巻さんの作品を観たことがない方は今回のツアーをキッカケに、弦巻楽団の色とりどりの作品群にぜひ魅了されてほしい。
四人芝居は無敵のフォーマットだ。登場人物が四人で、つまらなかった台本を読んだことも観たこともない。デイビッド・オーバーン「プルーフ」しかり、ジョン・パトリック・シャンリィ「ダウト」しかり、アーサー・ミラー「代価」しかり、清水邦夫「楽屋」しかり、つかこうへい「熱海殺人事件」しかり。本作もその系譜を受け継ぐ、人間の持つどうしようもなさを、温かい眼差しで見つめ描いている四人芝居である。